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「科捜研の女」(テレビ朝日)のロケ現場にて

──

キャメラマンとして一本立ちされたのは、いつだったんですか?

津田さん

杉良太郎さんの『遠山の金さん』のときですね。

──

ああ、1970年代後半頃ですね。きっかけは?

津田さん

杉さんはプロ意識が高くて、スタッフにすごく厳しいんですよ。
頭がいいから、本の読み方も深くてね。
「話の展開に無理がある。ここでこうなるのはおかしいじゃないか!」
とか、よく怒っていらっしゃいました。
現場がいつもピリピリしていているから、スタッフがNG出したら大変ですよ。
それでプロデューサーが、
「厳しい現場でも、つーやん(注:津田さんの愛称)なら大丈夫やろう」
ということで、最初はチーフ助手として付けられたんですよ。

なんだかね、みんな、「つーやんが杉さんとケンカするんやないか」って
期待してたらしいですよ。でも、ケンカどころか、杉さんに
「なんや、おもしろいやつやんか」って気に入ってもらって。
杉さんから、テレビ局のジェネラルプロデューサーに直々に
「津田にキャメラ回させてもらえんやろうか」と提案してくださったんですよ。

──

杉さんが直々に!

津田さん

そう。でも、それからが大変で。
撮影部には、当時40名近くの社員がいたんです。
映画を撮ってきた大先輩のキャメラマンや、
ずっと助手をやっている年上の先輩もいる。
そのなかで、僕は社員でもない、契約スタッフの、31か32歳の若造でしょ。

それまで、僕、柄は悪いですけど、冗談を言って場を盛り上げたりするから、
撮影部内でけっこう人気者だったんですよ。
それが、キャメラマンに決まったとたんに、挨拶もしてくれない。
控え室で「おはようございます」と言っても、知らーん顔して無視です。

「お前、なんぼのもんじゃい!!」
(注:↑思い切りヤクザ言葉なイメージでお読みください)
と思いましたよ。「また呼び出さなあかんかな」とかね(笑)

──

それは大変ですね、実行されなくてよかったです(笑)
でも、たしかに、製作本数が減っているわけだから、
社員の人たちも必死ですよね。
そのうえ、津田さんは、社員と違って追加でギャラが発生する
契約のキャメラマンなわけですから、そのなかで生き残っていくのは、
実は非常にハードルが高い。

津田さん

そうです。追加でギャラが発生するというのが理由で、
せっかく僕に声がかかった仕事でも、
予算の関係からほかの人にまわるということもけっこうありました。
悔しかったですよ、そりゃあ。

──

キャメラマンになると、やはり助手のときとはだいぶ違いますか?

津田さん

それはまったく違うものですね。
助手のときは、「俺だったらこういうアングルを撮ろう」とか、
先輩のキャメラをのぞいて、「なんやこれは。俺やったらこうするわ」
とか思ってましたけど、そうやって批評ができるというのは、
結果しかみていないからですよね。

完成された作品とか、キャメラマンが決めたレンズの向こうの世界は、
いろいろなことが判断されて、映し出された「結果」ですよね。
人は、「結果」については批評も比較もできるんですよ。
でも、その結果を作り出すまでが大変なんです。
背景があって、もので飾って、俳優がいて、ライティングして、
最終的に僕らが画を撮るわけですが、
それはつまり、ワンカット、ワンカットに、
ものすごい責任を負っているということなんですね。
もちろん監督もその責任を負っているんだけど、
レンズをのぞくのは自分ですからね。その責任は、助手とは全然違いますよね。

──

カットのイメージはどういうふうに決まっていくんでしょうか?

津田さん

キャメラマンの仕事は、本を読んで、打ち合わせして、
ロケハンに行くところからスタートしているんですけど、
画に関しては、僕の場合はほとんど現場で、
俳優さんが通しで演じているのを見ながら決めていきます。
「そのポジションからここまではフレームに入れよう」とか、
「こことここはアップが要るな」とか。

──

その場で決めるんですか?

津田さん

そうですね。監督と相談しながら。
昔は、台本が真っ黒になるまでカットのイメージを書き込んでいたんだけど、
ここ5、6年でそういうスタイルに変わりました。
昔の映画では、「シーン5、どこどこのアップ、いきます」
という撮り方をしていたから事前に考えておく必要があったけど、
いまは、まずは一回芝居を通すスタイルが増えてきたんです。
テレビの現代劇がそういう撮り方をするから、
俳優さんがそれに慣れてしまったんでしょうね。


台本に真剣に目を通す津田さん


『科捜研の女』の台本を見せてもらった。「アップのカットが必要なところに
○を付けている程度で、そんなに書き込まないんですよ」と言う。

──

変化でいえば、フィルムからビデオに変わったことで、
撮り方も変わるようなことはありましたか?

津田さん

ありますね。フィルムの場合は、キャメラマンの遊びの要素が多いんです。
どれくらいの感度のフィルムにするか、
光量はどのくらいならいけるか、といった具合に、
技術の試行錯誤で表現を追求できる面白さがある。
でも、ビデオ、とくに最近のビデオは性能がいいから、
極端に言えば誰でもきれいに撮れてしまうんです。

じゃあ、プロのキャメラマンとしてはどうしていく必要があるのか。
僕は「理論よりも現場」だと思っているから、
うんちくをたれるのはあまり好きじゃないんだけど、
まあ、あえて言葉にすると、
「いかに芝居をつかまえるか」ということが、より問われていると思うんですよ。

──

いかに芝居をつかまえるか?

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