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──

時代劇の場合、かつらを用意されると思いますが、
かつらはかつら屋さんで作るんですよね。

山田さん

そうです。主役とか、ある程度はかつら屋さんで作ってもらって、
それ以外は倉庫に保存してあるかつらの中から、
頭の形が合いそうなものを選んできます。

「大奥」のときなんか、大変でしたね。
あれは私が担当させていただいたけれど、
全国のフジテレビ系列のアナウンサーが40人くらい来られて、
全員のかつらを探してきて、頭合わせをして、結ったんだから。
「自分でもよくやったなあ」と思うくらい。
撮影開始が朝10時だったので、朝4時起きでした。

──

すごそうです。合うかつらを見つけるのも大変ですね。

山田さん

そう。でも、顔の形が一緒なら頭の形もだいたい合うんですよ。
ときどき全然違う人がいますけど(笑)

──

新しく造ったかつらはどんな状態で届くんでしょうか?

山田さん

あ、それはね、もうこんな感じですね。解かれた状態です。

この状態から、配役に応じた髪型に結っていくんです。

はじめに、「準ゴテ」って私たちはいうんですけど、
そこで温めている…

──

あ、これですか?

山田さん

そう。それに濡れた布を被せたら、湯気が出るでしょ。
それで髪の毛の癖を直すんです。
まあ、蒸気アイロンみたいなもんですね。
で、蒸気をあてながら、「マーセル」と呼んでいる、
髪を挟む道具があるんですけど、
…あ、これね。

これで髪を挟んで、くせを伸ばすんです。
今、こういう道具を作っている人がいないみたいですね。

──

そうですか。で、髪の癖を直したら、
髷(まげ)とか鬢(びん)とか、それぞれの部分を結い上げていく。

山田さん

そうですね。
あのね、まず、時代劇の頭の場合は、衣裳と同じように
武家娘なら武家娘の頭、町娘なら町娘の頭があるんです。

──

全部でざっと何通りくらいあるんでしょう?

山田さん

さあ…。時代にもよりますし、未婚か既婚かでも違いますからねえ。
江戸より以前は下げ髪の時代ですし、そういうのも含めれば
ざっと何百とかはあるんでしょうねえ。

──

前回、「女優の顔に合うように結っている」とおっしゃいましたが、
日本髪の時代ごと、身分ごとの型を守りながら、
顔の個性にも合わせていくんですね。

山田さん

そうです。

──

いまいち想像できないのですが、
例えばどういうふうに個性を出すんですか?

山田さん

それは、素人さんにはいくら説明しても絶対わからないと思いますよ(笑)

──

あ、はい。すみません…。でも、たとえばどんなところかと…。

山田さん

うーん、たとえばね、
首が長い女優さんの髪を結うときには襟足にくる部分を長くするとか、
輪郭に合わせて鬢の膨らみを微妙に調整するとかですかねえ。

でも、口で言ってもなかなかわからないし、
実際に私がやって見せても、わからないと思いますよ(笑)
結髪に入ってきた子でも、そのあたりがわかるのには時間がかかります。

──

そうですよね。

山田さん

でもね、昔の女優さんはね、
どんな結い方をしたら自分が美しくみえるのか、
よくご存知の方が多かったですね。

丘さとみさんもそんな女優さんのひとりでね。
彼女が久しぶりにこの撮影所に来たときに、私が髪を結ったら
「あら、私の好みを知っててくれはったのね」って。

──

最近はそういう女優さんは

山田さん

少なくなりました。だから、私から女優さんに
「武家娘のときはこういう頭で…」と教えることも増えてきました。
でも、どんな方であれ、プロの役者は、
自分が美しく結われることには強い関心を持っていらっしゃいますね。
そこは、映画村の「扮装の館」に来られる一般の方々の頭を結うときとは、
だいぶ違うところですよね。

──

そうすると、髪を結う側の気持ちも違ってくる?

山田さん

違います。女優さん相手の結髪の仕事というのは、
頭の形が結えるだけでは足りなくて、
大事なのは女優さんを美しく見せてあげるということだから。
そして、役を演じきれるように気持ちを盛り上げてあげることだからね。

──

「気持ちを盛り上げてあげること」?

山田さん

はい。私たち結髪というのは、
ある女優さんには、「きれいね、きれいね」って言って送り出す。
別の女優さんには、「かわいい、かわいい」って言って送り出す。
次の女優さんには、「かっこいい、かっこいい」って言って送り出す。
そういうのが、私らの心掛けだと思っているんです。

──

なるほど!

山田さん

私たちも、役者にいい演技をしてもらえたらうれしいですしね。
やっぱりね、この仕事をしていて一番よかったと思えるのは
担当した作品が評価されたときなんです。
一緒に作品を作っている人たちの仕事を互いに励まし合いながら、
そうしてできあがった作品が賞とかをもらって、
俳優会館の演技科の前に花が飾られてあるのを見たときには、
「ああ、この仕事をやっててよかった」って思います。

──

なんとなくわかります。
今、結髪部には何人くらいがいらっしゃるのですか?

山田さん

5人ですね。一番若くて28歳くらいです。

──

若い!

山田さん

そう。でも、その子ももう、現場付きをするようになって4、5年経つのかな。

──

前回、「昔のような徒弟制度はなくなった」とおっしゃいましたけれど。

山田さん

そうです。
昔とは違うから、「簡単にやめてもらっては困るなあ」という思いもあって。
若い子には、私なりに性格をみて、
「この子は人前で怒ってはいけない子」、
「この子は怒っても大丈夫な子」って考えながら、
昔なら教えてもらえなかったようなことでも、
ちゃんと教えているつもりです。

──

そうした方々にも、映画を作る喜びが受け継がれているといいですね。

山田さん

ええ、だと思います。だといいですね。
今の若い子から見たら、私は厳しい先輩かもしれませんけど(笑)

完

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